富士山登山時によくみられる身体の変化-内科系疾患発症の予防の視点から-(髙木 祐介 著) -奈良教育大学 出版会-
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707580859095100051015202530ホテル(標高10 m)早朝5合目(標高2,380 m)6合目(標高2,490 m)7合目(標高3,030 m)8合目(標高3,250 m)9合目(標高3,410 m)頂上(標高3,720 m)お昼過ぎ動脈血酸素飽和度(%)気温(℃)測定地点図日帰りプランの富士山登山時における各地点の気温および動脈血酸素飽和度の変化気温動脈血酸素飽和度(髙木研究室による調査結果2015)では97~99%を示します。この動脈血中を流れる酸素は体内を循環し、細胞に渡され、そして、私たちが活動するために必要とされるATP(アデノシン三燐酸)の産生のために使われます。もし、吸気中の酸素の量が著しく減った場合、生命維持に必要なエネルギーを十分に供給することができません。また、血液中の酸素量が低下することで、低酸素血症が起こり、様々な変調がみられます。富士山登山時では、動脈血酸素飽和度の低下は著しくみられます(図)。私たちの通常の生活の中で、動脈血酸素飽和度が80%台になることはほとんどなく、あったとしたら直ぐに病院へ搬送されなければならない重篤な状態です。高所順応によって動脈血酸素飽和度が低下しても活動できるわけですが、順応の速度や個人差については、わかっていないことが多いです。 急性高山病(以後、高山病と記します)は、おおよそ標高2,500m以上の場所に急速に登高した際に発症します。主な症状として、「めまい」、「吐き気」、「頭痛」、「食欲不振」等が挙げられます。日本には標高3,000m以上の山が21座あり、富士山だけなく、それらに登る際は、高山病が心配されます。また、個人差があり、標高2,000m以下で高山病にかかる方もいます。この状態になると、それ以後、登るたびに症状が悪化します。富士山頂上で御来光(朝日の

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