教育現場で活躍する福祉の専門家スクールソーシャルワーカーとは?(厨子 健一 著) -奈良教育大学 出版会-
4/9

います(山野 2016)。①では、小中学校は義務教育のため子どもの全数把握が可能です。また、一日の多くの時間を過ごすのは学校です。したがって、子どものちょっとした異変にも気づくことができます。②は、児童相談所や福祉事務所といった外部機関には、なかなか行きにくい場合があります。しかし、学校内に福祉の専門家がいることで、子ども、家庭、教員が気軽に相談できます。そのことは、少しでも早い対応につながるといえます。 では、学校では生活環境に課題を抱えていそうな子どもはいるのでしょうか。つぎに示すデータは、大阪府内の教員3089名にアンケート調査をしたものです。保護者の困り感を尋ねる問いがあり,「あてはまる・ややあてはまる」に回答した教員の割合を表したのが図2です(山野・厨子・赤尾 2011)。 結果をみると、「持ち物がそろわない」「子どもの宿題をみていない」「教材費等の支払いが滞る」「子どもの生活面の指導に協力が得られない」「服装や食事をきちんと用意していない」「自分の子どものことばかり主張する」という項目について、60%を超える教員が困り感として「あてはまる・ややあてはまる」と回答しています。 結果から、子どもの周りの環境に課題があることが推察されます。保護者の困り感は、ダイレクトに子どもの行動や心情に影響を与えます。したがって、子どもだけのアプローチでは、子どもの安心・安全な生活の維持はむずかしいといえます。今、児童虐待や子どもの貧困といった課題がクローズアップされています。これらの課題も家庭支援が不可欠です。環境要因を探り、早期にアプローチできるスクールソーシャルワーカーが、学校に必要といえるでしょう。 73.7%70.5%67.2%63.7%63.6%63.4%56.9%49.3%36.4%33.5%24.3%0%10%20%30%40%50%60%70%持ち物がそろわない子どもの宿題をみていない教材費等の支払いが滞る子どもの生活面の指導に協力が得られない服装や食事をきちんと用意していない自分の子どものことばかり主張する子どもがすべきことを保護者がやってしまう子どもの能力をはるかに超えた期待がある子どもに体罰を与えている保護者自身の相談や話が持ち込まれる担任交代・クラス替え要求があるあてはまる・ややあてはまるの合計図2教員の保護者への困り感

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 4

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です