教育現場で活躍する福祉の専門家スクールソーシャルワーカーとは?(厨子 健一 著) -奈良教育大学 出版会-
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4.事例をとおしてスクールソーシャルワーカーを知る ここでは,華子の事例を挙げ,スクールソーシャルワーカーがどのように働きかけるのかについて見ていきたいと思います。 出所:郭(2016)をもとに大幅修正 事例検討にあたり、「エコマップ」を作成します。エコマップとは、当事者に影響を及ぼしている環境との関係性の全体を示したものです(図3)。関係を線で表すことで、強い関係や葛藤関係となっているのはどこかが分かります。 図3をみてどのように感じたでしょうか。華子は家庭でしんどい思いをしているのではないだろうか、母親は一人で子育てをしており、地域からも孤立しているのではないだろうか、父親と母親の関係はどうなのだろうかなど、さまざまな意見が出てくると思います。エコマップは、華子の良子・美和子とのトラブルは、複雑な要因がからみあって生じているのではないか、と考えるきっ~華子の事例~ 「娘を学校には行かせない」、母親の電話を受けた担任は驚きました。「華子はいじめられています」といわれ、担任は家庭訪問をしましたが追い返されました。以前から母親と担任の関係は良くありません。 ある日、養護教諭と学年主任が家庭訪問をすると、母親は泣き崩れました。家庭は父親と母親、華子の3人です。父親は単身赴任、母親は専業主婦です。また,母親は地域になじめていません。 華子が中学2年生になったときから、母親との喧嘩が多くなっています。母親が、華子の機嫌が悪い理由を問いただすと、「クラス替えがあり、仲の良かった良子が美和子と仲良くなり、避けられるようになった」というそうです。話を聞いた母親は感情的になって担任に電話をしましたが、直後から華子が学校に行かなくなり、どうしたらよいのかわからないといいます。 担任が華子に話を聞くと,「突然、無視されるようになった。中学1年生以降、何かわからないけどイライラする。お父さんは帰ってこない。お母さんも、自分にあたる」といいます。担任は良子と美和子にも聞き取りをし、「最近,華子は暴言が多くなり、こちらから避けたわけではない」といいます。

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