植物を増やしたことありますか?(箕作 和彦 著) -奈良教育大学 出版会-
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挿し木は、植物のさまざまな部分から不定根(元々根のないところで形成した根)を発生させて植物個体を再生させる増殖方法で、材料の種類により茎挿しや葉挿しなどに分けられます。茎挿しは、カーネーション、キク、ツツジ、ブドウなどで行われ、葉挿しはベゴニアやセントポーリア、サンスベリアなどが扱いやすいです。挿し木の増殖効率は、材料となる母株の部位数に依存しますが、株分けよりも多くの植物個体を得ることができます。 接ぎ木は、穂木と台木を接いで、植物個体にする増殖方法です。スイカ、キュウリ、トマト、リンゴ、柑橘類など多くの植物は病害虫の対策や不良環境耐性の付与などに用いられることが多いです。しかし、ボタンやサボテンなどでは挿し木や株分けによる増殖が困難な場合に利用されてきました。そのため、接ぎ木では穂木と台木の材料となる母株が必要なので増殖効率は低いですが、単独では栄養繁殖できない植物を増やすことができます。 挿し木と接ぎ木における注意点として、湿度管理があります。挿し木では根ができるまで、接ぎ木では穂木と台木が接合するまでは、根からの水分を得ることができません。そのため、栽培している鉢などにビニル袋を被せて霧吹きなどを用いて湿度を高くする必要があり、根から水分を得ることができるようになったら徐々に湿度を下げると成功しやすいです。 組織培養は、株分けや挿し木と異なり容器の中で植物の一部(細胞1個や茎や葉の一部など)から植物個体を再生する増殖方法です。一般には、キク、カーネーション、ジャガイモ、イチゴなどではウィルスフリーの植物体を得るためや、ランやユリなどでは大量増殖を目的に利用されます。この方法は、無菌操作を行うための設備やいくつかの薬品が必要ですが、簡単な設備でできる培養方法も開発されてきています。 図1は、トマトの茎を1cmに調整した茎切片から植物個体の再生の様子を示したものです。具体的な方法として、まず、植物を生育させるために必要な液体肥料と植物個体を再生させるために必要な薬品を寒天で固めて培地を作ります。次に、無菌環境下であらかじめ殺菌した茎の切片を培地に置いて培養を開

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