植物を増やしたことありますか?(箕作 和彦 著) -奈良教育大学 出版会-
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始します。培養開始からおよそ2週間後には茎にカルス(未分化の細胞の塊)ができ、3週間後に不定芽(元々芽のないところに形成した芽)が形成され、4週間後では不定芽が大きく発達しています。 図1.トマトの茎培養における不定芽形成の様子 上記のように組織培養で形成した不定芽は、その茎や葉を材料として再び培養するとさらに数を増やすことができます。この過程を繰り返すことで、不定芽の大量増殖が可能になり増殖効率が大幅に向上します。また、不定芽を挿し木と同様に発根させてから容器の外に出すと苗として利用できます。このように、挿し木などでは増殖するための材料に限りがありますが、組織培養ではクローンの植物個体を大量に増やすことができます。しかし、組織培養を利用すると設備や培養中の環境制御など増殖のためのコストがかかるため、組織培養で増殖する目的や価値を明確にする必要があります。 組織培養の発展として、絶滅危惧種の保護に利用されることや遺伝子組換え技術があります。絶滅危惧種の保護では、個体数が少ないため母株を維持したままで対象植物の一部から植物個体を再生することが利点で、これは遺伝資源

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