外国語を学ぶことの意味-日本語学習者の学びの姿から-(和泉元 千春 著) -奈良教育大学 出版会-
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1 外国語を学ぶことの意味 -日本語学習者の学びの姿から- 奈良教育大学 国際交流留学センター 和泉元 千春 あなたは今、何か外国語を学んでいますか。日本で義務教育を受けた人なら、英語を学んだという人が多いと思います。英語の授業が楽しみで仕方なかった人、英語と聞いただけで逃げ出したくなる人、外国語を学ぶ人の気持ちは様々だと推察されます。では、あなたは何のために外国語を学んでいるのでしょうか。「その言語が話される国や文化に興味がある」、「その言語を使っていろいろな人とコミュニケーションしたい」、「就職に有利だと聞く」、「入試科目に含まれている」など、その目的も多様でしょう。 私が専門としている日本語教育学は、狭義には日本語を母語としない人に外国語として日本語を教えることについて研究する分野です。世界で日本語を学ぶ学習者の姿から、外国語を学ぶことの意味を考えてみたいと思います。 1.世界の中の日本語教育 世界ではどのような人が日本語を学んでいるのでしょうか。国際交流基金『2015年度海外日本語教育機関調査結果(速報値)1』によると、136の国・地域にある16,167機関で3,651,715人が日本語を学んでいると言われています。地域別に見ると、最も学習者数が多いのは中国(953,283人)、そのあとインドネシア(745,125人)、韓国(556,237人)と続きます。残念ながら前回(2012年度)調査と比較すると、学校教育における英語志向の高まりと第二外国語軽視の影響を受け、学習者数は減少しましたが、上位3カ国(中国、インドネシア、韓国)を除くと学習者数は増加しています。上記の数値は、初等・中等・高等教育機関や日本語学校などの日本語教育機関に所属したり、特定のユーザーを対象としたインターネットサイトで学習をしたりしている者に限定されています。したがって、学習機会の選択が多岐に渡る現代においては、実際の日 1 http://www.jpf.go.jp/j/about/press/2016/dl/2016-057-2.pdf

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