外国語を学ぶことの意味-日本語学習者の学びの姿から-(和泉元 千春 著) -奈良教育大学 出版会-
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7 日本に来た時、ぜんぜん日本語が分かりませんでした。でも今から、友だちのおかげで、私の日本語が良くなりました。それだけじゃなくて、私の友だちから、もっとならいました。カヤさんとトゥリーさんはフアションを分かることおしえてくれました。日本でふくはとても小さいから、カヤさんとトゥリーさんは大きなサイズをみつけてくれました。(略)次は、ショウさん。せかいに、じぶんのためではなくて、しんせつな人がいるとおしえてくれました。(略)アンドレアさんは自分にすなおになることをおしえてくれました。たとえば、友だちがアドバイスがいる時に、アンドレアさんはいつもすなおのアドバイスを与えます。ナデインさんは人が多いところに、さびしくかんじる時、友好が重要とおしえてくれました。最終の人はエルザさんです。エルザさんといっしょに話した時、彼女は大学に入る前に何を勉強したかったとぜんぜんわからなかったと言いました。でも、エルザさんは日本語を勉強し始めた時、もっと日本語を好きになりました。エルザさんは、ねつじょうの人もあるとおしえてくれました。エルザさんは、日本語を話す時、いつも目の中に本当のねつじょうが見えます。エルザさんは日本語を話すのがとても好きですから。だから、私はそのねつじょうてきな人になりたいと言いました。 最後に日本に行ったから、私はとてもうれしいと思います。たくさんけいけんのおかげでいろいろ習いました。友だちはもっとおしえてくれたから、今、私は自分のことがもっと好きになりました。どんどん私はなりたかった人になるためのほうほうをいつか習うだろうと思います。たぶん、ある日は、自分のことをぜんぶが好きになれると思います。 このレポートからAさんの日本語学習はどのように捉えられるでしょうか。 まず、普遍的な言語規範の獲得を重視した外国語学習の観点から考えてみましょう。 コミュニカティブ・コンピテンスの文法能力の観点から見ると、レポート中の日本語には文法の間違いや語彙選択の不自然さが見られます。例えば、2行目の「私は強硬で、反社会てきだったから。」の部分では「強硬」という語彙の選択に不自然さを感じます。「強硬」という言葉は「自分の立場・主張を強い態度であくまでも押し通そうとすること(広辞苑)」という意味であり、人の性格を表すのには使用されません。おそらく「強情」や「頑固」という言葉のほうがぴったり来るでしょう。また談話能力という観点から見ると、レポートでは短い文(単文)や同じパターンの複文が多用されているため、稚拙な印象を受けます。例えば、「お金がなかったから、仕事をしたかったです。いい仕事をしたかったから、大学生になりたかったです。お金がなかったから、仕事をしたかったです。いい仕事をしたかったから、大学生になりたかったです。~」の部分は<理由>を現す従属節「から」が多用され、列挙されています。また内容の重複する部分もあります。このように日本語の言語形式の正確さといった

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