江戸時代の古文書の魅力-暮らしを探る-(山形 隆司 著) -奈良教育大学 出版会-
2/7

江戸時代の古文書の魅力-暮らしを探る-奈良教育大学社会科教育講座山形隆司はじめに皆さんは、「古文書」って知っていますか?これは「こぶんしょ」ではなく、「こもんじょ」と読みます。本来、古文書は昔の人が書いたもので、手紙や証文のように、ある人からある人へ差し出されたものを指します。ただ、一般的には昔の人が書いた日記などの記録類も古文書と呼ばれることがあります。古文書は、それが書かれた時代に生きていた人々の暮らしを垣間見ることができる、とてもとてもおもしろいものです。それが証拠に、カルチャーセンターや博物館などで催される古文書講座はいつも大盛況です。ただ、とても参加者の年齢層が高くて、平均すると70歳くらいでしょうか。これからは、若い人にもぜひ古文書の魅力を知ってもらいたいと思います。そこで、今回は江戸時代に書かれたものを例にとって紹介していきます。1.江戸時代の古文書江戸時代の古文書は、その多くが青蓮院しょうれんいん流(御家おいえ流)という書体(くずし字)で書かれています。この書体は、全国的に普及したため、この書体で書かれた文字の読み方を一通りマスターすれば、どの地方の古文書も大概は読むことが出来ます。ただ、現在の我々はくずしていない楷書の文字に慣れているため、読むのが難しいと感じます。また江戸時代の古文書は、漢字が多くて漢文のように見えます。それは送り仮名がほとんどなく、その上、当て字が多く使われるせいです。「うらやましき」を「浦山敷」と書いたり、「むつかしき」を「六ケ敷」と書いたりします。これ

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る