主体的・対話的で深い学びの実現を意図した美術科学習の構築-俵屋宗達筆「舞楽図」(醍醐寺蔵)の鑑賞を事例として-(竹内 晋平 著) -奈良教育大学 出版会-
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構築していくことが教員には求められます。下記は、主体的・対話的で深い学びを実現するために示された、それぞれの学びに関するイメージです。では、このようなイメージに基づいて美術科学習で求められている授業設計とは、どのようなものでしょうか。ここでは【深い学び】の実現を意図した中学校美術科における鑑賞学習の展開を考えてみたいと思います4)。鑑賞の対象となる特定の作品からは、用いられている素材や技法などの特徴や表現された主題などについての事実を学ぶことができます。例えば、「この作品に使われている色は彩度が高い」「補色の関係が生かされた絵である」という事実です。このような事実を理解することを便宜的に<個別的理解>と呼びたいと思います。生徒が美術科学習で<個別的理解>に至ることは大変重要ですが、これだけを求める指導では学びは表層的なものにとどまります。そこで学びを深いものにするためには、生徒の分析や思考を経た<俯瞰的理解>への到達を意図した授業設計が必要だといえます。この<俯瞰的理解>は、特定の作品を鑑賞することを通して、生徒が美術の特性や美術と人間との関わりについて理解することであると定義します。例えば、「私たちは色彩に囲まれて生活していて、色があることで心豊かに生きている」という理解が考えられます。つまり、作品に関する事実的な知識を覚えることにとどまらず、自分なりに美術の意味や価値に気付いていくことが<俯瞰的理解>であるといえます。それでは具体的に俵屋宗達筆「舞楽図」を鑑賞する授業を考えてみましょう。主体的・対話的で深い学びの実現 (「アクティブ・ラーニング」の視点からの授業改善)について(イメージ)3) 【主体的な学び】 学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。【対話的な学び】 子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。【深い学び】 習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか。

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