主体的・対話的で深い学びの実現を意図した美術科学習の構築-俵屋宗達筆「舞楽図」(醍醐寺蔵)の鑑賞を事例として-(竹内 晋平 著) -奈良教育大学 出版会-
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2.俵屋宗達筆「舞楽図」について京都・醍醐寺が所蔵する「舞楽図」(図1)は、「風神雷神図」と同じ、俵屋宗達(江戸時代前期)によるものです。舞楽は、もとは中国大陸から伝来した古典芸能ですがその後、社寺でも舞われるようになりました。この作品は屏風仕立てになっています。屏風は左右に分かれていて、それぞれ「左隻させき」「右隻うせき」と呼びます。そしていずれも中央で二つに折れるようになっていて、少し折り曲げた状態にして畳の上などに立てて部屋を仕切ったり、二つにたたんで保管したりしました。このような屏風は「二曲にきょく一双いっそう」(二つに折れるものが一組)というスタイルになります。図1の画面をよく見てみると、屏風全体に金箔が貼られていてとてもきらびやかです。仮面をつけて舞っている舞人たちがいて、左隻の左側で崑崙八仙ころばせ、右側に還げん城じょう楽らく、羅ら陵りょう王おうという曲が舞われています5)。また右隻では左側に納曽なそ利り、右側に採さい桑そう老ろうという舞を舞う人が配されています6)。これらの舞では、演目ごとに登場する人物の装束や面をつけています。そして、左隻の上にちらりと見えているのは松と桜の木、右隻の下に置かれているのは、舞楽で使用される大太鼓です。どちらも全体が描かれずにトリミングされています。図1俵屋宗達筆「舞楽図」(醍醐寺蔵,重要文化財,紙本金地着色)二曲一双,各155.5×170.0cm,江戸時代(17世紀)画像提供:総本山醍醐寺

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