主体的・対話的で深い学びの実現を意図した美術科学習の構築-俵屋宗達筆「舞楽図」(醍醐寺蔵)の鑑賞を事例として-(竹内 晋平 著) -奈良教育大学 出版会-
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本稿で提案した「舞楽図」の鑑賞授業計画は、あくまでも一つの事例です。教員が作品を深く研究することによって、同じ作品でも<個別的理解>や<俯瞰的理解>の方向性はさらに広がっていくことでしょう。以下に示すのは、これまでに提案した内容の簡単なまとめです。美術の学びを授業内で終わらせるのではなく、生徒が卒業した後の将来に役立つ見方や考え方を育てることが求められています。「描くこと、作ること」についての資質・能力を育成することはもちろん大切ですが、それだけが美術の学びではありません。クリエイティブな思考を伴った主体的・対話的で深い学びの実現を目指して、これからも魅力的な授業の開発を進めていきたいと考えています11)。付記本研究は,平成29年度科学研究費(基盤研究(C),課題番号(17K04781),代表者:竹内晋平)の研究助成を受けた。画像および授業資料等をご提供いただきました総本山醍醐寺,同学芸員・田中直子氏,京都市立醍醐中学校教員・南奈都子氏に深く感謝申し上げます。【学習構造の階層化】 鑑賞学習において主体的・対話的で深い学びを実現するためには、生徒が学ぶ内容を<個別的理解>と<俯瞰的理解>の二階層に分けて授業構築する方法が考えられるのではないか。【発問の活用】 生徒の思考を促し、学びを<個別的理解><俯瞰的理解>へと方向付けるためには、教員が具体的に発問することが有効ではないか。 【鑑賞に関わる体験の導入】 生徒が主体的に表現・操作する、他者と対話するなどの<鑑賞的体験>を導入することが、美術を実感的に理解することにつながるのではないか。

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