[英語の冒険]-[言語の命運]-(米倉 よう子 著) -奈良教育大学 出版会-
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[英語の冒険]-[言語の命運]-奈良教育大学英語教育講座(英語学)米倉よう子国際語としての地位を確たるものとし、我が世を謳歌する英語。「英語帝国主義」と揶揄されながらも、ある程度の英語ができなければ、研究の世界ではスタートラインに立つことすらできない現実がある。しかし、今でこそ我が物顔に振舞う英語にも、実は苦難と忍従の歴史があったとすればどうだろうか。英語相手に悪戦苦闘中の我々にも、この外国語に対して、多少は親しみが湧くというものである。この小冊子では紙幅の都合上、英語の辿った数奇な運命のほんの一部しか紹介できないが、ここはひとつ、その冒険話に耳を傾けてみよう。そうすることで、英語に興味が湧き、英語を学ぶ意欲が少しでも高まるのならば、それに越したことはない。なお、本小冊子のタイトルは、MelvynBraggのTheAdventureofEnglish:TheBiographyofaLanguage(2004)から借用していることを、あらかじめお断りしておく。1.冒険の始まり英語はもともとブリテン島の土着の言葉ではなく、先住民であるケルト民族を征服したゲルマン民族の母語である。ケルト民族をさっさとウェールズやコーンウォール等の辺境の地に押しやったゲルマン人たちは、同じゲルマン民族であるデーン人のバイキング被害にあいながらも、アルフレッド大王(AlfredtheGreat,849年-899年)という文武に優れた為政者を得たこともあり、ブリテン島に英語を根付かせていく。

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