幼稚園4歳児は他児の喧嘩やいざこざにいかに介入するのか(松原 未季 著) -奈良教育大学 出版会-
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2-2.いざこざの状況の代弁事例2201X年11月21日カイトは、教師に近づいて小さな声でつっかえながら、「木の棒で…、叩こうとした」と言った。教師が、「誰が?」と聴くと、カイトは小さな声で「テイタ君が」と言った。教師がテイタに「(カイトの)手を叩いたの?」と聴くと、テイタは罰が悪そうな表情を浮かべて、無言でうつむいていた。ユウタは、「足。小枝で。中庭で(テイタがカイトを)叩いた」と教師に伝えた。すると、教師はテイタに、「それはとっても危ないわ!足だからよかったけど、顔にあたったら危なかった。これからはA先生に言いに来て、この枝が危なくないか」と言った。すると、テイタは罰が悪そうな表情で頷いた。 事例2では、カイトはテイタに叩かれたことを教師に伝えようとしたが、小さな声でつっかえて話をしていました。さらに、教師がテイタにいざこざの状況を説明するように求めても、テイタは無言でした。この事例のように、幼稚園で発生する喧嘩やいざこざの場面は、教師が見ていないところでも生じ、教師がその状況を把握することが困難な場合もあります。しかし、非当事者であるユウタが当事者の二人に代わって、いざこざの時の状況を説明したために、教師はいざこざに対応することができました。このように、教師が主導していざこざを解決に向かわせる場合にも、非当事者の幼児は介入し、当事者と教師を仲介することで、教師の援助を手助けする役割を担っています。 3.幼児のみで介入する事例幼児のみで介入する場合には、当事者のうち一方の幼児に加勢したり、当事者かんの関係をとりなして仲裁したりします。 3-1.加勢加勢は2つの異なる原因によって生じていました。第一には、当事者の一方が不利な状況に陥っていることを、非当事者の幼児が認識した場合です。第二には、非当事者の幼児が当事者の片方を親しいことです。

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