幼稚園4歳児は他児の喧嘩やいざこざにいかに介入するのか(松原 未季 著) -奈良教育大学 出版会-
5/9

①不利な状況に陥っている幼児への加勢事例3201X年10月20日ユウタ・ジュンペイ・リカは牛乳瓶の蓋を使ってオセロを始めようとしていた。ジュンペイは、ジャンケンでオセロの順番を決めようと提案したため、ユウタとリカはジャンケンをした。その結果、ユウタが勝ち、喜んで飛び跳ねた。それに対して、リカは負けてしまい、泣きそうな表情をした。すると、ジュンペイが、ユウタが勝ったにも関わらず、「もう1回(ジャンケンを)やるよ」と言い、二人は再びジャンケンをした。しかし、再びユウタが勝ったため、ユウタは飛び跳ねて喜んだ。リカはまた負けてしまったため、再び泣きそうな表情を浮かべていた。その後、ジュンペイはまたもや「もう1回(ジャンケンをして)」と言ったため、ユウタはジュンペイに向かって不満気な顔で「なんで?もうユウ君勝ったよ」と言った。 事例3においては、リカがジャンケンに負けると、ジュンペイが二人に、二度、三度とジャンケンをするように促しました。ですが、ジャンケンをやり直しても、リカが負け続けました。リカは負けた際は二度とも泣きそうな表情を浮かべていました。ジュンペイは、この表情から、リカの悔しさを読み取り、ジャンケンをやり直させたと考えられます。この事例から、4歳児は他児の表情の変化から、その幼児の情動を汲み取りながら、いざこざに介入することが示唆されます。いざこざの場面では当事者の幼児の表情から、どちらの幼児が不利な状況に陥っているのか、非当事者の幼児が判断をしています。特に、「泣く」という行為は不利な状況に陥っていると第三者に把握されやすく、事例3のように、非当事者の幼児は泣いている方の幼児に味方しやすい、と推測されます。 ②親しい幼児への加勢事例4201X年10月13日クラスの園児は運動会の絵を描いていた。ノゾミは自分が描いた絵をトシコに見せていた。ノゾミの前に座っていたチカはノゾミに向かって、絵を見せる

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る