幼稚園4歳児は他児の喧嘩やいざこざにいかに介入するのか(松原 未季 著) -奈良教育大学 出版会-
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ように頼んだ。しかし、ノゾミは即座に画用紙を裏返して「ダメ!」と言って、チカを睨みつけた。トシコもチカに向かって、「ダメ!」と言って、怖い顔で睨みつけた。 ノゾミとトシコは仲が良く、日頃から行動をともにしていることが多かったです。事例4でも、絵を見せ合っていました。しかし、ノゾミは、チカが自分の絵を見ようとすると強く抵抗しました。さらに、トシコもその絵はノゾミの絵であるにもかかわらず、ノゾミと同様にチカに「ダメ!」ときつく言っていました。これは、トシコがチカの行為を誤っていると判断したというよりも、親しいノゾミの肩を持ったと考えられるでしょう。事例4から、4歳児は、当事者の一方の幼児と親しい場合には、親しい方の幼児の肩を持ちうる、と言えるでしょう。 以上の事例(事例3・4)から、当事者の状態や当事者との関係性は、非当事者の幼児からの「加勢」を引き出す要因になると考えられます。 3-2.仲裁事例5201X年9月20日工作場面で、ミクはカイトのトイレットペーパーの芯を工作に使おうとした。すると、カイトは怒ってミクから芯を無理矢理取り上げようとした。ミクは芯を両手でギュッと握りしめて抵抗したが、カイトに芯を取られてしまった。この二人のやりとりを見ていたハルカは、ミクに向かって、「ミクちゃん、カイト君に『この芯ちょっとだけ貸してちょうだい』ってちゃんと言った?」と尋ねると、ミクは否定した。ハルカがミクに「ちゃんと『ちょっとだけ貸してちょうだい』って言わなきゃダメだよ」と言うと、ミクは頷いた。次に、ハルカはカイトに「カイト君、カイト君が5歳になったらミクちゃんの言うこと聞かなきゃダメだよ」と優しく言った。そして、再びハルカはミクの方を向き、ミクの肩に手を置き、ミクをカイトのほうへ向かせた。すると、ミクはカイトに「1個だけ芯借りてもいい?」と尋ねた。カイトは「いいよ」と言って、芯を1個ミクに渡した。その後、ハルカは再びミクの肩に手を置いて、「ミクちゃん、カ

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