幼稚園4歳児は他児の喧嘩やいざこざにいかに介入するのか(松原 未季 著) -奈良教育大学 出版会-
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イト君にちゃんと謝って」と言った。ミクはカイトに謝ると、カイトは「いいよ」と言った。 事例5のいざこざが解決へと導かれたのは、ハルカによる仲裁があったからと言えよう。この場面で、ハルカはミクとカイトの双方に注意し、2人に公平な態度で接し、上手く仲裁しています。ハルカはまずミクにカイトの芯を勝手に取ったことを注意しました。カイトが専有していた芯をカイトの許可を得ずに使おうとしたミクの行動の誤りを、ハルカは指摘しています。また、ハルカは、ミクがカイトに芯の貸与を頼んだのかを確認していました。ハルカは、ミクに要望は言語表現すべきことを伝えています。 ハルカはその後、カイトにも注意をしました。ハルカは、カイトに対しては、芯を使いたい、というミクの要望を考慮せずに、強引に芯を取り返したカイトの行動も良くないと、捉えたようです。 このようにハルカは双方の要求を把握した上で、中立的な立場でいざこざに対応していました。ハルカの仲裁により、最終的にはミクがカイトに謝り、カイトがミクに一つ芯を貸したことから、当事者の双方が納得して葛藤が解決されています。 事例5から、介入者のハルカは、目の前で展開されている他児の状況について、当事者の行動や、状態、要求を的確に汲み取った上で、中立的な立場で仲裁しています。その結果、当事者双方の納得を得て、葛藤が解決へと至っています。 4.教師のいざこざへの援助が幼児の介入に与える影響事例6201X年10月13日リョウとユリカは、隣合わせで2つ空いている席が見つからず、保育室内をさまよっていた。教師はクラスの園児に「なんかね、いっぱい座るのに、困っている人、いるみたい。どうしてリョウ君とユリカちゃんは座ってないのかな?」と問いかけた。すると、ヒナタが「2人で座りたいから」と答えた。教師は、「ヒナタちゃんよく分かったね。リョウ君とユリカちゃん2人で座りたいって言ってるんだけど、お隣同士で空いてる席ないんだって。どうしたらい

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