幼稚園4歳児は他児の喧嘩やいざこざにいかに介入するのか(松原 未季 著) -奈良教育大学 出版会-
8/9

い?」とクラスの園児たちに問いかけた。 テイタは即時に自分の席から立ち上がり、リカとリョウに近づき、2人の手を握って、自分が座っていた席とその隣の席に座らせた。教師はテイタを褒めた後、ノゾミとトシコも席を探しているのに気付いて、「ノゾミちゃんとトシコちゃんも一緒に座りたいんだって」と知らせた。すると、リカが「リカちゃん、席替わってあげる」と言った。 事例6で、教師はいざこざが生じたことをクラスに伝え、非当事者の幼児に解決への協力を呼びかけています。席決めの際には、多くの幼児が親しい幼児と一緒に座るために自分たちの席を確保したい、という欲求が強く、他児の状況に目を向けることが困難になりがちになります。教師の言動は、子どもたちが自分の席を確保することに捉われるのではなく、友だち同士で座れなくて困っている仲間への援助要請の役割を果たしています。 多くの4歳児にとっては、テイタのように他児の葛藤に気付いて即座に行動をとることは困難でしょう。この場面では、テイタがリョウとユリカに席を譲ったのに続いて、リカも自らノゾミとトシコに席を譲ろうとしていました。このように、他児のいざこざに介入できる幼児が率先して何らかの行動を起こせば、それに倣って行動できる幼児も出てくるでしょう。 この事例から、教師は、4歳児が葛藤への対処に限界があることを理解し、当事者ではなく、非当事者の幼児にも葛藤に目を向けてかかわることを求めていました。これが、前述の事例で示した4歳児のいざこざへの介入を引き出すことに影響したと考えられます。 ○松原未季・本山方子(2013) 幼稚園4歳児の対人葛藤場面における協同的解決:非当事者の幼児による介入に着目して.保育学研究.第51巻第2号.Pp.187-198.

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る