新しい目で宇宙を観る-X線天文衛星の開発-(信川 正順 著) -奈良教育大学 出版会-
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新しい目で宇宙を観る -X線天文衛星の開発- 奈良教育大学理科教育講座信川 正順 1. 天体観測技術の発展 夜空を見上げるとたくさんの星が広がっています。古来より人類は自らの目で星を眺めてきました。特徴のある星の並びから星座を考えたり、周囲の星とは違う動きをする惑星を発見したりしてきました。1600年頃にレンズを組み合わせると遠くのものが近くに見えることが発見され、これにより望遠鏡が発明されました。そして、1609年、ガリレオ・ガリレイが初めて天体に望遠鏡を向け、木星にも衛星(ガリレオ衛星)が存在することを発見しました。ついに人類は、自分のものではない「新しい目」を用いて宇宙を観察することを始めたのです。 それ以来、天体観測技術はめざましく発展してきました。人間の目は可視光線しか見ることができませんが、赤外線や電波での観測が実現したことにより、それまで知らなかった全く新しい宇宙を見ることができるようになりました。例えば、赤外線では恒星の光で暖められた星間塵が観測できます。可視光では暗黒星雲として見える星間ガスの特に濃い部分は、電波で観測できるようになりました。これにより、人類が想像していたよりずっと豊かな宇宙の姿が明らかになってきました。 2. X線天文学のはじまり 天文学は、赤外線や電波のように波長の異なる電磁波に観測を拡大していきました。1950年代には太陽からの強いX線放射が確認されていましたが、他の恒星は極めて遠くにあるため、地球からは検出できないほど弱いだろうと考

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