新しい目で宇宙を観る-X線天文衛星の開発-(信川 正順 著) -奈良教育大学 出版会-
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て進めます。「ASTRO-H」の場合、BBMの段階から打ち上げまで10年の歳月を要しました。図1は、X線CCDカメラのFMを衛星本体に組み込む前に、いってらっしゃいの意味を込めて一緒に撮った写真です。 2016年2月17日、「ASTRO-H」はH-IIAロケットに載って鹿児島県種子島宇宙センターから打ち上げられました。私も打ち上げを見に行きましたが、地響きと轟音が凄まじく、本当に迫力がありました。自分が開発した観測装置が宇宙に打ち上げられるのを見るのは、やはり感慨深いものでした。図2はその時撮影した写真です。 「ASTRO-H」は無事に軌道投入され、「ひとみ」と名付けられました。すべてがうまくいっているように見え、順調に初期観測が開始されました。しかし、打ち上げからわずか1ヶ月後の3月26日、「ひとみ」の通信は突如途絶え、二度と戻ることはありませんでした。原因は、姿勢制御系の不具合のため徐々に高速回転し、分解してしまったためと考えられています。このニュースを初めに聞いたときは、私はまさに頭が真っ白になりましたが、原因が徐々に明らかになるにつれ、悔しさと喪失感で胸がいっぱいになりました。 しかし良いニュースもあります。わずかな観測時間ではありましたが、「ひとみ」は優れた成果をあげました。X線マイクロカロリメータで初めて天体の観測に成功したのです。図3は、「ひとみ」のX線マイクロカロリメータがペル 図2 X線天文衛星ASTRO-Hの打ち上げ(2016年2月17日17時45分)。 図1 軟X線撮像装置SXIと私(筑波宇宙センターにて, 2014年3月27日)。

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