なぜドイツでは緑の党が「成功」したのか-「68年世代の党」としての視角から-(西田 慎 著) -奈良教育大学 出版会-
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なぜドイツでは緑の党が「成功」したのか -「68年世代の党」としての視角から- 奈良教育大学社会科教育講座西田 慎 はじめに―右傾化するドイツ? 2018年12月、ドイツの国政与党・キリスト教民主同盟(CDU)の党首選挙が行われました。18年間党首を務めたアンゲラ・メルケル首相が党首を退くと共に、彼女の腹心・アンネグレート・クランプ=カレンバウアーが保守派のフリードリヒ・メルツらを破って新党首に選ばれました。日本では、メルケル首相の難民に寛大な政策が支持層の離反と右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の台頭を招き、メルケル首相の党首辞任につながったという報道が少なくありません。しかし近年二大政党の一角を食う形で躍進しているのは、むしろ移民に寛大で親欧州の緑の党です。例えば19年2月2日に発表された世論調査では、緑の党は支持率19%で、32%のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)に次ぐ支持を得ており、連立与党の社会民主党(SPD)が15%、AfDが12%と続いています。緑の党は、中道左派のSPDだけでなく、保守のCDU/CSUからも支持を奪っており、単にドイツの右傾化だけでは語れません。 そもそも党首交代のきっかけとなったのは10月に行われた2つの州議会選挙でCDUと姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU)が相次いで敗北したことです。しかし両選挙で躍進したのは緑の党であり、例えばバイエルン州議会選挙では、前回の得票率を倍増させて、17.5%の得票率を記録し、SPDを抜いて、第2党に大躍進しました。ヘッセン州議会選挙でも19.8%の得票率で第2党となっています。一方AfDは、バイエルン州議会選挙では得票率10.2%で第4党、ヘッセン州議会選挙でも得票率13.1%

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