なぜドイツでは緑の党が「成功」したのか-「68年世代の党」としての視角から-(西田 慎 著) -奈良教育大学 出版会-
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設置といった施策を盛り込んだ新移民法、脱原発への転換、環境税の導入といった改革政策が実施されています。 05年に実施された連邦議会選挙では、緑の党は8.1%と得票率を若干減 図12005年連邦議会選挙における緑の党の集会で演説する フィッシャー外相(ハンブルク市で筆者撮影) らし、下野することになりました。代わって二大政党であるCDU/CSUとSPDによる大連立政権が発足し、CDUのメルケルが首相になりました。野党に転落した緑の党の将来を危ぶむ声もあったのですが、実際は、大連立政権に加わったSPDが政策面で妥協を強いられて支持者離れを起こす一方、野党に戻った緑の党は好調でした。例えば連邦議会選挙を見ると、09年は10.7%、13年は8.4%、17年は8.9%と、10%前後の安定した得票率を絶えず得ています。さらに11年3月の日本の原発事故後は、脱原発を掲げる緑の党の支持率が急伸し、第1党のCDU/CSUに迫る28%にまで上昇したこともありました。さらに同年3月のバーデン・ヴュルテンベルク州議会選挙の結果、ドイツ初の緑の党出身の州首相が誕生しています。 2.緑の党の政策 緑の党はしばしばエコロジー政党と言われます。しかし反原発運動だけでなく、反核平和運動や東ドイツの民主化運動にもルーツを持つ緑の党は、環境問題だけでなく、安全保障政策から社会政策に至るまで幅広く

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