なぜドイツでは緑の党が「成功」したのか-「68年世代の党」としての視角から-(西田 慎 著) -奈良教育大学 出版会-
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れ得るわけではない」とされました。そして「国連、欧州安全保障協力会議(OSCE)、欧州連合(EU)、NATOの一員として、ドイツは集合的安全と世界平和の維持のために適切な寄与をすることを義務付けられている」として、ドイツ連邦軍の海外派遣を承認したのです。一方で党内左派に譲歩して、派遣の際のドイツ連邦議会の賛成は過半数ではなく、3分の2の多数を必要とするとされて、ハードルが高めに設定されました。 さてこの新綱領が制定されてからも、既に17年が経ちました。現在緑の党内では、この綱領に代わる新たな綱領の制定に向けて議論が進んでおり、20年には正式に制定される見込みです。 最後に、緑の党の最新の政策を知るために、17年の連邦議会選挙のために作られた選挙綱領「未来は勇気から作られる」も紹介しておきましょう。この綱領は17年6月のベルリン党大会で採択されました。日本で言えば、各党が選挙時に作成するマニフェストや公約集のようなものです。 この綱領に掲げられた公約は多岐に亘るのですが、柱の一つはエネルギー政策です。ドイツは既に22年までの脱原発が決定済みで、議論の対象は今では脱石炭(火力)をいつまでに実施するかに移っています。これに関して緑の党は30年までの脱石炭を実施し、全電力の需要を再生可能エネルギーで賄うことを選挙綱領で打ち出しました。また特に効率の悪い石炭火力発電所は、次の議会の任期中に廃止すると述べています。 環境政策では、ディーゼル車やガソリン車への決別を打ち出し、30年からは排気ガスを出さない車だけがドイツでは許可されるべきだと謳っています。そしてガソリン車よりも、こうした車の所有者への自動車税軽減を公約しています。 焦点の移民・難民政策では、専門能力を持った外国人労働者がドイツで仕事を見つけることを容易にすること、難民手続きの迅速化、「今のアフガニスタンのような」不安定な地域への難民送還阻止、難民流入の上限設定反対などが盛り込まれました。 それ以外にも、武器輸出の大幅削減とNATOやEU加盟国以外への禁止、憲法擁護庁の改組、富裕層への課税などが公約として選挙綱領で挙げられています。中には、ドラッグであるカンナビスの合法化や、食品廃棄

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