希望を持って前向きに、技術の将来について語り合う技術科の授業(世良 啓太 著) -奈良教育大学 出版会-
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希望を持って前向きに、 技術の将来について語り合う技術科の授業 奈良教育大学技術教育講座世良 啓太 1.はじめに 皆さんは、技術教育に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。本学の技術教育講座に入学した1年生からは、「木の本棚」、「ラジオ」、「延長コード」といった製作物や、「はんだづけ」、「のこぎり」、「パソコン」、「実技」、「楽しい」といった作業や道具に関することが多く挙げられました。おそらく世間一般的にも、多くの人が中学校技術・家庭科技術分野(以下、技術科)の授業を思い浮かべながら同様のイメージを持つのではないでしょうか。中には、タイピングやコンピュータの操作方法などのスキル習得を技術教育と考えている方もいるかもしれませんね。 言うまでもなく、何かしらの製作物の完成を目指して、様々な原理や道具について学習しながら、ものづくりの楽しさを味わいつつ、スキル習得をすることは技術教育の大きな特色です。一方で、世の中の技術が進展し社会が絶え間なく移り変わっていることを踏まえると、楽しむことやスキル習得をすることばかりが技術教育でフォーカスされて良いのでしょうか。私自身、10年前は大学1年生であり、当時は技術教育を楽しさ満点の教育として捉えていました。紆余曲折あり現在に至るまで、諸先輩方から技術教育に関わる幅広い知見を得る中で、技術教育の在り方について深く感銘を受けてきました。本稿では、そのような知見を織り交ぜながら、これからの技術教育に求められることについて、私なりの言葉で述べていきたいと思います。

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