希望を持って前向きに、技術の将来について語り合う技術科の授業(世良 啓太 著) -奈良教育大学 出版会-
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4.技術の将来展望について語り合う授業 それでは、前述した技術教育の方向性を踏まえると、どのような技術科の授業が考えられるでしょうか。タイトルにもあるように、生徒が「希望を持って、前向きに技術の将来について語り合う授業」を私は実施していきたいと考えています。これまでに、枯渇する森林資源や原子力発電、遺伝子組み換え技術やSNSといった世論でも賛否の分かれている技術の今後の在り方について、生徒がどのように技術を見極めて評価しているのか、その内実を探索的に把握してきました。これらの技術がもっと発展していくべきか否か、しっかりと自分自身の意見を持つことは私たち大人にとっても難しいことです。現に、生徒からも以下のような意見が散見されました。 その他にも、環境負荷に偏った意見や安全面に偏った意見などがあるものの、技術の進展を念頭においた考えは多くはありませんでした。このような賛否の分かれている技術は他教科においても少なからずトピックとして取り上げられることがあります。技術科だからこそ実現のできる「希望を持って、前向きに技術の将来について語り合う授業」を目指して取り組んできたこれまでの授業実践を2つ紹介したいと思います。 遺伝子組み換え技術のこれからについて語り合わせるために、その前段階として作物を生産する人々の苦労や工夫を知ることをねらいとして、糖度や収穫量の向上を目指したオリジナルトマトの栽培に取り組ませました。写真は、太陽光を倍増させるビッグミラー作戦とトマトの形状を変えて売れ行きを伸ばすスクエアトマト作戦です(生徒考案)。また、枯渇する森林資源のこれからについて語り合わせるために、その前段階として、木材以外の材料やその加工方法を知ることをねらいとして、広く技術科の授業で行われている木材加工に加えて、3Dプリンタの活用や合成樹脂についての学習を題材に取り入れました。「べつにあんまり気にしていない。」「安全ではないから減らしていくべき。」「変なことが起こるかもしれない。」「見たことのないおもしろいものができそう。」「今までの昔の人はしていないから。」「便利そうだからいっぱい使ったらいいと思う。」「悪くなったらやめればいいから。」

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