障害のある子どもや人の“こころ”を理解するために(富井 奈菜実 著) -奈良教育大学 出版会-
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障害のある子どもや人の“こころ”を理解するために 奈良教育大学特別支援教育研究センター富井奈菜実 1. 発達診断って? みなさんは“発達診断”という言葉を聞いたことがあるでしょうか。おそらく馴染みのない言葉ではないかと思います。 発達診断というのは、主に障害のある子ども・人の障害や発達の状態を明らかにし、どのような教育や支援が必要であるかを見立てることを言います。通常、発達診断を行う際には発達検査や知能検査が用いられます。これらの検査には年齢ごとに標準化された項目が配置されており、すべての項目にわたって「できた」「できなかった」と評価されます。そして検査の結果は、「○歳○か月」という発達年齢で示されたり、「IQ□」という知能指数で示されたりします。これらの数値はその子(人)の発達の状態を知る一つの情報となります。しかし、項目一つ一つの“でき方”にはその子(人)それぞれに“違い”があります。 例えば、検査者が積木で作ったトラックと同じものを作れるかどうか、という項目(1)があります。この項目に対してAちゃんは「できる!」と自信たっぷりで取り組み成功させます。対してBちゃんはなかなか手が出ません。「やりたくない!」「できない!」とお母さんにしがみつきます。そこで検査者が「じゃあまずは積木でたくさん遊ぼう!」とBちゃんが作りたいものを作れるように提案しました。するとBちゃんは笑顔になり、積木で様々なものを作ります。しばらくしてから、「じゃあトラックも作ってみよう!」と声をかけると、Bちゃんは張り切って「うん!」と返事し、トラックを作る項目を成功させました。

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