障害のある子どもや人の“こころ”を理解するために(富井 奈菜実 著) -奈良教育大学 出版会-
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ちの研究チームでは発達段階の存在を証明する研究を進めてきました。今回紹介するのは、言語や教育制度など、様々な文化的違いがある日本とベトナムの子どもたちに発達検査を実施し、その結果を比較した研究です。 図1は「菱形模写(菱形の描かれたカードを子どもに見せ、模写させる)」(4)、図2は「4数復唱(検査者が言った4つの数字を復唱させる)」(5)という項目の通過率を示したものです。 日本とベトナムの通過率を比較してみると、多くの子どもが通過するようになる時期は、ベトナムの子どもたちの方が早いことがわかりました。(6) この結果について服部(7)は、ベトナムの幼児学校(日本の幼稚園)の保育内容や方法の違いが反映されているのではないかと指摘しました。例えばベトナムの幼児学校では「認知」という文字の練習をする時間や、「文学」という詩やお話を覚える時間が設けられているそうです。また「復習遊び」として、「認知」や「文学」を復習する時間もあるといいます。このような日本との教育内容の差によって、通過率に違いが生じていると考えられます。 次にこれらの項目の仲間集めをするという分析(8)を試みました。この仲間集めの分析(多重応答分析という方法を用います)とは、発達検査の項目(子どもたちに実施したもの)を、関係のある項目同士で集合させるというものです。多重応答分析では、関係がある項目は近い距離で、関係がない項目は遠い距離で示されます。こうして集まった項目の集合は、ある質的な特徴をもった仲間とみることができるのです。そしてこれらをどのような仲間でまとめることが0.0%0.0%0.0%0.0%7.1%11.8%37.5%0.0%0.0%0.0%20.0%33.3%76.9%80.0%0.0%20.0%40.0%60.0%80.0%100.0%3344556図1 菱形模写の通過率 13.3%33.3%50.0%68.4%69.2%76.5%85.7%47.7%66.7%100.0%100.0%100.0%100.0%100.0%0.0%20.0%40.0%60.0%80.0%100.0%33445564図2 4数復唱の通過率

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