障害のある子どもや人の“こころ”を理解するために(富井 奈菜実 著) -奈良教育大学 出版会-
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できそうかをクラスター分析という方法によって検討しました。これらの方法を用いて仲間集めを行った結果を図3、図4に示します。図3は日本の結果、図4はベトナムの結果です。 分析の結果、各国とも4つの仲間に分けられました。また4つの仲間を構成する項目は、日本もベトナムもほぼ同じものでした。つまり、ある質的な特徴をもった仲間が日本でもベトナムでも同じように検出されたということです。では、この仲間は何を示しているのでしょうか。 ▲で示した仲間の項目を見てみると、「姓名」(9)や「大小理解」(10)というものがあります。「姓名」は自身の姓と名を言えるかどうか、「大小理解」というのは小さい丸と大きい丸を区別することができるかどうかをみる項目です。これはそーちゃんのエピソードのところで説明した対比的な概念にあたります。つまり▲はこのような質をもった項目の集合と考えられます。したがって、得られた4つの仲間は発達段階の存在を実証しているといえそうです。また4つの仲間はそれぞれ田中らの理論でいう、1歳半頃の発達の時期、2〜3歳頃の発達の時期、4歳半頃の発達の時期、5〜6歳頃の発達の時期とよく適合していました。 以上のように、教育内容などが異なる二国間においても、発達的な特徴をもつ共通の仲間が取り出されました。このことから、地域差や文化差をこえる発達のまとまり、つまり発達段階が存在する可能性が示唆されたといえます。 図3 日本の項目の仲間 図4ベトナムの項目の仲間

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