日本語を歌うときの罠(水野 亜歴 著) -奈良教育大学 出版会-
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日本語を歌うときの罠 奈良教育大学音楽教育講座水野 亜歴 1.はじめに 皆さんは音楽の授業で様々な国の歌を聴いたり歌ったりした経験があるかと思いますが、授業で扱われた歌唱教材のほとんどは日本語の歌であったでしょう。しかし、どれほどの人が日本語の特性について理解したうえで歌っているでしょうか。今回は日本語のうたを歌う際に特に気をつけたい3つの罠について述べていきたいと思います。 2.一つ目の罠「ひらがな」 皆さんは初めて歌う曲を練習するとき、まずどのようなことから始めますか。旋律をピアノで弾いたり、CDやYouTubeで聴いてみる人もいれば、詩をじっくり読む人もいるでしょう。色々なアプローチの仕方があると思いますが、必ず行って欲しいことがあります。それは「詩」をじっくり読んで、イメージすることです。学校の授業を思い出してみてください。歌う前に、まず詩の内容を理解するところから始めたと思います。それだけ詩をよく読み、詩の内容や何を訴えているのかをイメージすることは大切なことです。 しかし、ここに注意したい「一つ目の罠」が潜んでいます。詩を読むときに五線譜の下に書かれた文字を読んでいませんか。詩を読むときはまず原詩を見ることが大事です。日本語は一音節だけでは情報を伝えられません1)。「お」「ん」「が」「く」のように複数の音節がつながることで「音楽」というように意味が伝わります。

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