日本語を歌うときの罠(水野 亜歴 著) -奈良教育大学 出版会-
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譜例1を見てみましょう。吉丸一昌の詩に作曲家の中田章が曲をつけた《早春賦》という曲の歌い出し部分です。譜例1を見てわかるように、楽譜上ではほとんどの文字がひらがなで音符1音ずつに当てられていることが多いです。これでは「詩」の意味をスムーズに読み解くことが出来ません。 譜例1 次の「ひらがな」で書かれた文章と「原詩」を見比べてみましょう。 同じ文章でも、目から入ってくる印象がまったく違うように感じませんか。 右側のひらがなだけで書かれた詩は、文章の区切りが非常に分かりにくく、正確に内容を理解することが難しくなります。加えて漢字で「春」「名」と書いてあれば意味が分かりますが、ひらがなのみでは「春花の実の」なのか「春は菜のみの」なのか、いろいろな言葉が想像できてしまいます。しかし、原詩を理解しておけば、五線譜に書かれた言葉の流れに自然と気が付くことができるでしょう。

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