日本語を歌うときの罠(水野 亜歴 著) -奈良教育大学 出版会-
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今度は、図1の言葉のアクセントを逆にした図2を読んでみましょう。 図2 おそらく「飴」「柿」「橋」といった言葉を想像したと思います。これは西欧語にみられる強勢アクセント(=強弱アクセント)とは違い、基本的に音節は同じ強さと長さで音の高低によって言葉を判別するという日本語の特性のひとつで高低アクセントと言います2)。ただし、高低アクセントの位置は地方によって異なります。また、第二音節が上がる場合は第一音節と第二音節は同等の価値として立て、第二音節が下がる場合、第一音節は立てますが、第二音節は軽くします3)。ここに罠が隠れています。譜例1をもう一度見てみましょう。歌いだしの「春」の高低アクセントは図3のようになります。 図3 この場合、第二音節は下がっているので「る」は軽く発音します。春の「は」は6拍目アウフタクト(弱拍)、「る」は1拍目に書かれています。何も考えずに歌うとアウフタクトにくる「は」を弱くし、強拍である1拍目の「る」は強

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