次世代型教員養成の在り方について-高校生を対象とする奈良県次世代教員養成塾の取組-(竹村 謙司 著) -奈良教育大学 出版会-
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「課題対応能力」に関する質問項目8「困難な事態に直面したとき、どこに問題があるかすぐに見つけることができる」でのみ得点が有意に向上しました。これは、各回の講座で受講生に伸ばしたい力を明確に示し、自ら考え、自らの言葉で表現する(書く、説明する等)活動を重視し、必ず「交流」「体験」「振り返り」の時間を設けたことから、「学習者」としての多様な経験を積み重ねる中で、向上が見られたと考えられます。 さらに、第1期受講生の第1回質問紙調査(9月)と第3回質問紙調査(8月)を比較した結果、α係数については、「自己理解・自己管理能力」「人間関係形成・社会形成能力」「課題対応能力」の3つの測定尺度に関する質問項目のまとまりにおける信頼性が見られました。t検定については、15項目中10項目で得点が有意に向上し、すべての測定尺度で得点が有意に向上した質問項目が含まれていました。第1回講座から第5回講座までの講座内容は、「自己理解・自己管理能力」や「人間関係形成・社会形成能力」に関わるパーソナリティ・資質に関する内容であり、様々な受講生と交わる中で、自尊感情やコミュニケーション、多様性理解の困難という内的危機を認知する期間であったと考えられます。第6回講座から第10回講座までの講座内容は、パーソナリティ・資質に関する内容を踏まえながら、「課題対応能力」や「キャリアプランニング能力」、「教職開発力」に関わる学習力・授業力、キャリアデザインについての内容となっています。教員を目指す自分自身のアイデンティティ(自己同一性)を模索しながら各回の講座を受講する中で、内的危機を主体的に解決していったことが、すべての測定尺度で得点が有意に向上した質問項目が含まれる結果につながったと考えられます。全10回の講座の内容構成から、受講生は、螺旋的に、各能力を発達させたことが推察されます。 (2)振り返りシート調査の分析 受講生の質的な変容を見るため、各講座時に「振り返りシート」(図4)を作成し、講座内容の振り返りを行いました。記述内容としては、「講座テーマの理解」「講座を通しての他者との交流等」「講座テーマに関する自己の課題」「自己の課題の改善」「学ぶことや教えることの楽しさ」「講座内容の進路実現への活用」等となっています。第1期受講生の第1回質問紙調査(9月)

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