自閉スペクトラム症と記憶:教育への示唆(堀田 千絵 著) -奈良教育大学 出版会-
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2種類のゲームを子どもに提示しました。1つは、過去の記憶を調べる課題です。まず、子どもたちが知らない話をすることからはじめます。 T(先生):イルカがジャンプするのをみたことはある?…なんでジャンプするかっていうとね、体に付いた虫を取るためなんだって。 C(子ども):「へー、そうなの!かゆいんだね」 その後、しばらくしてから、知らないふりをして…同じ子どもに対し、 T:「何でイルカがジャンプするのか…知ってるかな?」 C:「先生、知らないの?虫取るためだよ」(得意げに!) T:「そっか!それってね、誰から…、いつ…、どこで…きいた?」 6歳を過ぎるころから、「先生でしょ、さっき、ここだよ」と過去の記憶が確実に自分の体験として語れるようになってきます。 2つめの課題は、未来に向けられたものです。同じ子どもにこのような話をします。 T:「明日このお部屋にお客さんが来るんだけどね、このお部屋、何もないでしょう。だからお花を飾ってきれいなところにお客さんを招待したいの。いつこのお花飾っておけばいいと思う?」 C:「えー今でしょ、だって、だって‥今じゃないとだめだから」 答えは、「今」でも、お客さんが来る「前」でもいいわけです。大事なことはお客さんが来てしまった「後」に飾っていては遅いので、そのことを理解しているかが知りたいことでした。図2が結果です。 図24歳、5歳、6歳のASD(自閉スペクトラム症)群とTD(定型発達)群に おける過去と未来にかかわる記憶の課題に正しく回答できた割合 00.20.40.60.81ASDTDASDTD過去未来正しく回答できた割合(%)群と過去・未来の課題4歳5歳6歳

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