「静かにしてくださーい!」-授業場面の作られ方の社会学的考察-(粕谷 圭佑 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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「静かにしてくださーい!」 -授業場面の作られ方の社会学的考察- 奈良教育大学学校教育講座粕谷 圭佑 1.はじめに 「静かにしてくださーい!」 このセリフ、小学校でだれしも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?おそらく静かにしなければならない状況なのに騒がしいままの教室が思い浮かぶでしょう。そのような状況でこのセリフが飛び出すようすは、いかにも学校らしい「あるある」な場面です。 このありふれた場面は、よくよく考えるといくつかの不思議な特徴を持っています。まず、この「静かにしてくださーい!」というセリフが、日本の学校を経験した多くの人、それも、かなりの年代にわたる人々にとって聞き馴染みがあるものだろうということです。もちろん、うるさいときにはこう言うべし、と皆が学校で教えられるわけではありません。それなのに多くの人々がこの場面を思い浮かべられるのであれば、「静かにしてくださーい!」は、時と場所を越えて出現するセリフだということになります。また、このセリフは多くの場合、教師ではなく児童の側が発する、ということも特徴的です。児童が児童に注意する様子は、まるで先生の代わりをしているようにも見えます。しかし、その一方で、「静かにしてくださーい!」の連呼が実質的に教室をうるさくさせていることもよくあります。 このように考えてみると、児童がこのセリフを発することで何をしているのか、だんだんと分からなくなってきます。一体、「静かにしてくださーい!」が

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