「静かにしてくださーい!」-授業場面の作られ方の社会学的考察-(粕谷 圭佑 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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ます。実際に「静かにしてくださーい!」という発話が出現する場面の映像を、もっと詳細に見てみると、まだまだ明らかにすべきポイントが見つかるはずです。 4.おわりに やたらと細かくささいな部分を見ているな、と思われたかもしれません。また、教師を志す方の中には、自分はもっと大きくて重要な教育課題を考えたいという人もいるかと思います。 しかし、本稿で見てきた「ささいな」やりとりは、実はさまざまな形で重要な教育課題と結びついています。なぜなら、究極的には教室で起きているひとつひとつの小さな出来事が、日々の教育活動を作り上げているからです。「小1プロブレム」や「発達障害児の増加」といった教育問題は、どちらも、学校的な場面はどのように作られているのか、だったり、子どもがいかにして学校に特有な場面に入っていくのか、といった問題と密接に結びついています。教育という営みが生み出される最前線は、つねに現場のひとつひとつの現象にあります。まずは身の回りの現象をひとつ手に取り、よく眺めてみる。そうすると、意外なほど豊かで面白いものが見つかるかもしれません。 〈注〉 (1)Sacks, H., Schegloff, E. & Jefferson, G., 1974, “A simplest systematics for the organization of turn-taking conversation,” Language, Vol. 50, No. 4, pp. 696-735.,(=2010, 西阪仰訳「会話のための順番交代の組織—最も単純な体系的記述」『会話分析基本論集:順番交代と修復の組織』世界思想社, pp. 7-153.)を参照のこと。 (2)McHoul, A., 1978, “The Organization of Turns at Formal Talk in the Classroom,” Language in Society, Vol.7, pp.183-213.を参照のこと。 (3)言語の意味がその状況と文脈によって様々に変わることを、言語の「インデックス性(文脈依存性)」と言います。詳しくは、前田泰樹・水川喜文・岡田光弘編, 2007, 『ワードマップエスノメソドロジー:人々の実践から学ぶ』新曜社.を参照のこと。

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