発達の特性と性差-メンタルヘルスとの関連を含めて-(全 有耳 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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この図からわかることは、発達項目の獲得のスピードは、➀4:6~5:0の男児が最も遅く、➁5:0~5:6の女児が最も早い、③4:6~5:0の女児と5:0~5:6の男児がほぼ同じである、ということです。つまり、幼児期後半の段階では男児と女児で発達の状態におよそ半年の差があり、女児の方が早いという結果が得られました。この結果はある一つの年代で、どれだけのことができるようになったかという指標で評価した一つの結果に過ぎませんが、近年では脳科学の視点からも発達や脳機能の性差に関する研究結果が明らかになってきています。 3.発達の特性の現れ方に性差はあるのか?次に、発達の特性の現れ方の性差について検討した結果を紹介します1)。対象は325人(男児160人、女児165人)で、就学前のいずれかの段階で発達の課題に対して発達支援を受けた者(支援あり群)とそうでない者(支援なし群)について、5歳時点の発達と行動の状態にどのような差が認められるかを調べました(支援あり群:男児31人、女児11人)。5歳時点の評価は前述の5歳児健診の問診(保護者回答)の回答を使用し、発達項目12項目(上述の保育士への問診11項目に、「家族に言ってから遊びに行ける」を加えたもの)、行動項目18項目(設問内容は文献1)を参照、不注意/多動/衝動性、行動制御、対人・社会性の3つの群ごとに、気にならないを0点、少し気になるを1点、とても気になるを2点としてスコア化)の平均スコアを比較しました(図2)。図2では支援あり群を山吹色、支援なし群を水色で示しています。男児にお

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