情報とは-人が人間として生きるために-(小﨑 誠二 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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レンジして、「目に見えない実体のない情報と、社会を支えている技術を、私たちのコミュニケーションのために上手に使うこと」と説明しています。一般的には、Informationの訳語として情報という言葉が使われています。個人的な話をすると、大型ショッピングモールやテーマパークを訪れて、困ったときに私たちが向かうのはインフォメーションです。確かにそこは情報を提供してくれる場ですが、日本語では「案内(所)」と書かれていることも多く、私のニュアンスとしては、Informationは「案内」「ガイド」のほうがしっくりきますが、みなさんはいかがでしょうか。さて、情報という言葉の語源についてです。これまでの研究によって、明治期に日本で生まれた言葉だということがわかってきています。少しあいまいな表現にしているのは、情報を論じるときに集まってくる人たちは数学や工学に関心をもっている人が多く、どちらかと言えば、言葉の成り立ちなどの語学に関心をもっている人は少ないように感じていますので、実は、まだまだ調べたり研究したりする余地が残っているのではないかと思っているからです。語源については、神戸大学の小野厚夫氏や七尾短期大学の音成行勇氏たちによってかなり詳しい調査がなされていて、両氏の考察に基づいて、1990年9月の日本経済新聞には、情報という言葉の語源が確定されたという内容の記事が発表されています。実は、両氏の調査と考察の結果が発表されるまでは、森林太郎(森鴎外の本名です。最近の若い人たちは、しんりんたろうと検索するらしいですね)が、ドイツ滞在中に「クラウゼヴィッツの戦争論」について講演し、帰国してから軍人向けに訳して資料を作成するときにドイツ語の和訳として情報という表現を使ったということがはじまりだろう、というのが有力な説でした。今でも、森鴎外語源説を記述しているWebサイトや書籍も散見されます。詳しくは両氏の論文、論考にあたっていただければと思いますので、ここでは、情報という言葉の語源に関して論じられてきたことの概要だけを紹介しておきます。・明治時代に、軍事に関わる用語として、敵の様子を知るという意味で表現されていた「敵情(状)の報知」「敵情(状)の報告」などという表現を短縮して造られたのが最初ではないかと考えられている。

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