情報とは-人が人間として生きるために-(小﨑 誠二 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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まなぶということは、「まなぶ前と後で、同じ風景が違って見える」ということでもあります。新しい情報を得て、自分の中にある思いや経験と結びつけることができたら、それが「まなぶ」ということです。まなぶということは、人が生きる営みそのものであり、成長する人は、同じ風景をもう一度見るということが難しい。とすると、「いつも同じ風景が見える」という人は、実はもう成長が止まっているのかもしれませんね。情報とは、「人」がたくさんの人に囲まれて「人間」として生きるために必要なものです。これは間違いありません。そして、情報は、発信する側が作るものではなく、受けとる側が自分の経験に基づいて自分の中にあるものを引き出して創り出すものです。双方に共通でやりとりできる何か存在していなければ、そもそも情報は情報になりません。情報を伝えたつもりでいてもうまく伝わらないのは、送り手か受け手かどちらか一方に問題があるのではなく、どちらにも問題があるということがほとんどです。 おわりに 新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、私たちの生活が制限されました。学校も登校を前提にすることができない状況が生じて、たとえば、リモートで学校と家庭を繋いだオンライン授業を実施していますが、子どもたちが学習するための場やツールを扱うために、先生が必死になってどれほど腕前を磨いたとしても、授業を受ける子どもたちに受けとる力や環境がないと成立しないのは当然のことです。日頃から、オンラインを活用した授業を一緒になって繰り返し行い、慣れておく必要があります。学習の基盤となる情報活用能力の向上が大切だと言われているのは、子どもたちが自分の力で自分のことができるようになるために必要だからです。情報とは何かという問いを、みなさんが考える一助となれば幸いです。

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