3歳児は人の目を気にする?(残華 雅子 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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3歳児は人の目を気にする? 奈良教育大学ESD・SDGsセンター残華 雅子 1.はじめに みなさんはこんな経験がないでしょうか。友達がくれた手作りお菓子がイマイチだけど「おいしい」と笑顔を見せた、みんなと意見が合わないけれど「私もそう思う」と頷いてしまった、などなど。そんな本音を隠してしまった経験は誰にでもあるものです。人がなぜ、本音を言えなくなってしまうのかというと、それは「本音を言うと人からどのように思われるのか」を気にするからです。もしくは「他人は、自分にどのような態度を期待しているか」という空気を(頼まれたわけでもないのに)読むからだといってもいいかもしれません。仮に、自分以外絶対に誰も見ない日記帳にその日の出来事を綴るのであれば、「あのクッキーはおいしくなかった」「みんなはああ言っていたけど絶対違う」と自分の本音を書けると思います。それは、自分の本音を他人に知られることがない、つまり他人にどう思われるかを気にしなくていいからです。多かれ少なかれ、人は誰しも「目の前の人に自分がどう思われるか」を推測し、「他人からみられたい自分」を演じます。これを「印象管理」といいます。では、このような「他人の目を気にした振る舞い」は何歳ごろからみられるのでしょうか。 2.幼児は大人の言うことを信じすぎる? Jaswal et al. (2010) は3歳児を対象に以下の実験を行いました。実験者と子どもの間に赤色と青色の2色の箱を置き、子どもにはどちらかの箱に隠されたシールを見つけることを求めます。実験者は子どもからは見えないように赤

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