3歳児は人の目を気にする?(残華 雅子 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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5歳ごろになると、教えられた箱とは逆の箱をすぐに選ぶようになることもわかっています。皆さんが同じ課題を行ったら、むしろ「騙しているように見せかけて、実は本当のことを言っている」という裏の裏の可能性まで読み、入っていると教えられた箱をあえて開けるかもしれません。このように考えると、この時期の子どもには、この時期だけの見え方や考え方があるようです。3歳児が他人の視線から何をどこまで予想できているのか、何歳ごろ大人と同じレベルに達するのかといったことを述べるには、更に研究を行い、明らかにする必要があります。 子どもが人の目を気にしているといわれると、「子どもは素直で純粋無垢だと思っていたのに」とがっかりしてしまったり、「3歳児でも空気を読んで大変だな」とため息をつきたくなったりするかもしれません。しかし、このように他者の目を気にして行動を変えることができるのは、「何をされると、人は喜ぶのか、悲しむのか」といった人の気持ちを想像する能力や、「何をすると、その後何が起こるのか」といった未来を見通す能力、「自分は他者にとってどんな存在か」といった人との繋がりの中で自分を見つめる能力が育っているからこそであり、子どもたちの成長の一側面とも言えます。成長過程にある子どもたちの、その時期にしか現れない考え方や行動に少しでも興味を持ってもらえれば幸いです。 [引用文献] • Jaswal, V. K., Croft, A. C., Setia, A. R., & Cole, C. A. (2010). Young children have a specific, highly robust bias to trust testimony. Psychological Science, 21, 1541-1547. • 残華雅子・青山謙二郎 (2020a). 幼児が不正確な言語情報に従う傾向への情報提供者の観察の影響 心理学研究, 90, 621-627. • 残華雅子・青山謙二郎 (2020b). 誤った言語情報に3歳児が従う傾向への保護者の観察の影響 行動科学, 59, 13-20.

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