異文化理解を研究する-日本のイスラームを例として-(小村 明子 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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異文化理解を研究する -日本のイスラームを例として- 奈良教育大学国際交流留学センター小村 明子 1.はじめに 奈良教育大学では、文化について学ぶ講義がいくつかあります。また、市民講座として異文化理解をテーマにした公開講座を開いています。教育とは関係のないテーマと思われるかもしれません。ですが、多くの学生が文化の講義を率先して取り、授業を熱心に聴いています。単位取得とは関係なくても、異文化理解についての公開講座に参加しています。なぜでしょうか。それは日本が多文化社会へとその道を進んでおり、事実、小学校や中学校では外国の宗教文化を持つ子どもたちがいるからです。 2003年からの日本政府による観光招致政策によって外国人観光客が増加しています。また2020年までに日本で学ぶ外国人留学生を30万人に増やそうという政策によって日本で学ぶ外国人も増えました。さらに、技能実習制度を利用して海外から多くの労働者がやってきています。2019年4月には、常に人手不足であった14の職種に対して就労ビザを発行するという「外国人材受入れ制度」が施行されました。この制度によって日本で働く外国人がさらに増加することとなりました。 海外から人が日本にやってくるということは、その人の保有する宗教文化もまた日本に入ってくることを意味します。特に1980年代後半から日本に滞在する外国人のムスリム(イスラム教徒)が増加しました。これに伴い、これまで多くの日本人にとって遠い存在だったイスラームが、日本国内で身近に感じられるようになりました。まず、学校現場ではムスリムの子どもたちが増えて

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