異文化理解を研究する-日本のイスラームを例として-(小村 明子 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
4/12

ります。表1で簡単に説明しました。 表1 イスラームの六信五行(括弧内は、アラビア語のカタカナ表記) (出典:小村明子作成) 元々イスラームは中東で生まれた宗教です。それが時代を経て世界中に広まっていきました。ではどうやって広まったのかといえば、2つの広がり方があります。一つは戦争によって領土を拡張していったこと、もう一つは交易活動によって広がっていったことです。交易活動は平和的な広がりです。時間はかかりますが、穏やかにイスラームが各地に入り定着することとなりました。イタリアからトルコを抜けて、中央アジアの各地を経て中国に向かうシルクロードはみなさんご存知のことと思います。かつてシルクロードの交易路にあった都市では、今も多くのムスリムが居住しています。また、海のシルクロードも同様です。その起点となるアラビア半島の南、現在のイエメンの地域は「ハドラマウト」と呼ばれており、その地域からインド洋を経てマラッカ海峡、そしてインドネシアやフィリピンへ至る交易路も発達しました。その結果、現在東南アジア地域にもムスリムが多く住んでいます。 六信五⾏唯⼀神(アッラー)神はただ⼀⼈であり、この唯⼀神を信仰すること。信仰告⽩(シャハーダ)複数のムスリムを証⼈として同席させた上で、イスラームに改宗することを宣⾔すること。なお、決められた⽂⾔を3回以上唱える。天使(マラーイカ)天使の存在を信じること。礼拝(サラート)1⽇に5回決められた時間に⾏う礼拝のこと。啓典(キターブ)イスラームの聖典「クルアーン」の他にも、ユダヤ教の「タウラー(モーセの律法)」や「ザブール(詩篇)」、キリスト教の「インジール(福⾳書)」も啓典とされる。斎戒(サウム)イスラーム暦の9⽉であるラマダーン⽉に⾏う断⾷のこと。それ以外にもイスラームにとって重要な⽇に断⾷をする者もいる。断⾷は⽇中太陽が昇っている間に⾏われる。預⾔者(ラスール)神から下された⾔葉を預かる者のことである。預⾔者はムハンマドだけでなく、モーセやイエス・キリストも含まれる。喜捨(ザカート)ラマダーン⽉に貧しい者に対して、施しをする。この時の施しを「ザカート」と呼ぶ。なお、この⽉以外にする施しのことを「サダカ」という。サダカは任意の施しである。来世(アーヒラ)最後の審判を受けた後に⾏く、来世(天国と地獄)を信じること。巡礼(ハッジ)現在のサウジアラビア王国内にある聖地メッカ(マッカ)に巡礼すること。定命(カダル)⼈間の運命はあらかじめ神によって決まっている。それを定命という。

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る