発達障害のある子どもへの支援について-特別支援教育研究センターの取り組み-(小松 愛 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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こうした発達障害のある人は、能力面に凸凹があることが多いです。興味関心が狭いということもよく聞きます。ある状況ではとても優れた能力を発揮できるけれど、違う状況では極端に困難さが目立つ、というアンバランスなイメージです。そのため部分的に出来ないのは怠けているせいではないかとネガティブな評価をされるケースも少なくありません。自分でもなぜ失敗を繰り返すのか分からず、自分で自分の力を信じられなくなる人もいます。このような状態が続くと二次障害と呼ばれる、身体症状や精神症状、悪化すると精神疾患を引き起こす危険性があるため、早めに対処する必要があると言われています。 今から15年前の平成19年、学校教育法の改正により「特殊教育」から「特別支援教育」へと移行し、従来の障害に加え、知的に遅れのない発達障害も含め特別な支援を必要とする子どもが特別支援教育の対象であると明文化されました(2)。障害のある人もない人もお互いを尊重し認め合える「共生社会」の形成に向け、学校現場ではインクルーシブ教育システムの構築によって多様な子どもたちが共に学ぶ仕組みが目指されることになったのです(3)。例えば教室で、一斉に向けた説明や指示が上手く理解に結びつかなかったり聞きそびれてしまったりして、周りの子から遅れることがあります。衝動的に手や口が動いてしまい、お友達と衝突することもあるでしょう。そのような生活や学習上の困り感を持つ子どもに必要な支援や合理的配慮を提供し、学校での不適応を減らすことが特別支援教育では求められています。個別に声掛けをするというのも1つの支援ですし、あるいは手順ややるべきことを提示して皆が確認できるようにしておくのも良い支援方法だと思います。後者のように、同じ教室、同じ空間で多様な子どもが一緒に学び合うことができるような、全員にとって分かりやすい指示や授業になるよう学校全体で工夫していくことも期待されています。 3.発達障害の診断とアセスメントで見ているもの ここで注意しておきたいことが、発達障害として挙げられる特徴が見られるからといって、イコール診断がつくわけではないということです。社会生活の中で障害状態にあるかどうかが重要なポイントになります。つまり、家でも学校でも皆に理解され、困り感なく過ごせている場合は「障害」とはならないのです。一方で、その子の特性と環境とが合わないと、適応が難しい状態、「障害」

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