発達障害のある子どもへの支援について-特別支援教育研究センターの取り組み-(小松 愛 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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状態にあると判断されます。また、発達障害の診断があっても、その特性や程度は本当に人それぞれです。どんな支援が必要かもバラバラです。そこで必要になってくるのが、「アセスメント」という作業です。 では、子ども一人ひとりのことを、一番よく知っているのは誰でしょうか。もちろんご家族であり、また学校の先生など身近な関わりのある人たちでしょう。何より、子ども本人が一番分かっているはずです。ただ、自分の言葉では上手く説明できない部分や、普段の生活ではあまり見えてこない部分があるので、心理発達検査を通して情報を整理しようというのが私たちの行っているアセスメントです。子ども本人や身近な方に協力してもらいながら、様々なツールを使って目の前にいる子がどんな子なのかを教えてもらっているのです。 一般に広く使われている検査の中で、ウェクスラー式の知能検査があります(WISCやWAISなど、対象の年齢で種類が分かれています)。人の知的能力を測ることを目的とした知能検査の歴史は20世紀に遡りますが、ウェクスラーが開発した知能検査の登場により、「支援のためのツール」としての意味合いが増し、改訂を繰り返しながら様々な現場で活用されるようになりました(3)。知能指数(IQ)という数値に表される個人の認知的な特性が分かると、そこから個人の得意な部分、苦手な部分が見えてきます。発達障害のある人は能力面に凸凹を抱えていることが多いと述べましたが、特性を捉えることができれば、得意なところを伸ばして長所にしたり、得意な部分を活かして困難さをカバーしたり、別の工夫で苦手さを補うなど支援を考える手がかりになります。ただし、たった1つの検査だけで子どもの多様な姿を把握できるわけではありません。そのためアセスメントの際には、テストバッテリーと呼びますが、色々な方向から測る検査を組み合わせて行います。また、繰り返しになりますが、同じような能力のある子どもでも置かれている環境によって困り感の現れ方は違ってきます。そのような環境要因についても発達相談の中で聞き取り、問題となっている状態を裏付けられる=説明できるように検査を選択しています。 アセスメントを通して私たちは、診断の有無に関わらず子どもの発達状況や能力面の特徴といった様々な情報を整理し、支援の手がかりとなるよう本人や保護者、学校の先生など周囲の人に伝え返す役割を担っています。

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