発達障害のある子どもへの支援について-特別支援教育研究センターの取り組み-(小松 愛 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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4.実際に子どもの支援に繋げる アセスメントの結果を生かすためには、どうすれば良いでしょうか。センターでは、検査を担当した相談員が検査結果について本人や保護者に直接説明を行っています。もちろん、予想通りの結果だったという感想を聞くことが多いですが、客観的に見てもここがポイントになりますね、ということを共有することができれば支援の方向性が定まっていきます。同じく学校の先生に説明する機会がありますが、教室で見られる行動に納得がいったという場合や、そういう背景があるとは気付かなかったと驚かれる場合もあります。そこから認識の変化、関わり方の変化が生まれます。 発達障害のある子どもの支援を考えるうえで何がハードルになるかと言うと、「目に見えない障害だからこそ理解が得られにくい」という点です。だからこそ、困り感の中身を見える化することが大切なのです。家庭と学校が共通理解を持つことができれば、子どもに対して一貫した対応を取ってもらえたり、本人なりの工夫やチャレンジを後押ししてもらえたりし、子ども自身が落ち着いて過ごせるようになるという、ポジティブな連鎖が期待できます。 また、個別の支援のほかに学習支援プログラムと社会性向上を目的とした小集団プログラムも実施しています。学び方に工夫が必要な子どもや同年代との交流が難しいという子どもが、自分のことを受け入れたり、自分の持ち味を生かした社会との繋がり方を学んだりできる場になればと考えています。 学習支援プログラムは、学習障害や注意欠如・多動症といった様々な発達障害特性によって通常の学習方法では成果が出にくいという子どもを対象にしています。事前に発達相談と心理発達検査を実施し、特性を把握したうえで課題の設定や学習方法を考えていきます。例えば、漢字をなかなか覚えられないというAさん。アセスメント結果から、見たものを正しく記憶しておく力が弱いことが分かると、定着させるための方法として漢字のパーツに注目させるような課題を使用したり、書き順を言葉やエピソードで印象付ける覚え方を取り入れたりします。ただ繰り返し書くというのではすぐに飽きて疲れてしまう子どもも、工夫や遊びを合わせると意欲的に取り組んでくれることが多いです。また、センターは大学生の実地研修の場としての機能も有しており、大学生に学習指導のスタッフとして参加してもらい、担当している子どもの課題作りをお

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