発達障害のある子どもへの支援について-特別支援教育研究センターの取り組み-(小松 愛 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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願いしています。一人ひとりの特性をふまえつつ、語彙を増やすためにかるた遊びを取り入れたり、お金の計算を練習するためにお買い物ごっこができるようなグッズ(図1)を作ったりと、ユーモアを織り交ぜながら課題を用意してくれています。そのおかげで、勉強がメインの集まりですが、子どもたちは苦手意識を持たずに楽しく参加できていると感じています。 もう一つは、自閉スペクトラム症の子どもを対象にしたプログラムです。自閉スペクトラム症に見られる特性として、こだわりや特定の事柄に物凄い集中力を発揮するといったものがあります。そうしたユニークさを生かして社会との繋がりを持ってもらおうと、「鉄道好き」に着目したプログラムが始まりました。このプログラムでは、自閉スペクトラム症の認知特性に合わせて次のような合理的配慮と環境設定がされています(5)。 1)ポジティブな動機付け 2)予告とリハーサル 3)メンバー間の交流 4)場の構造化 5)他者視点の意識 「好きなことを追求できる場所」として募集 メンバーズカードの発行など特別感のある演出 日程や活動内容を事前周知、お手本、リハーサルの実施 共通の目標に向けての自然な交流、振り返りの機会 毎回の活動内容を明確にしておく 一般向けの成果発表会の実施 また、運営スタッフとは別に、鉄道に詳しい大人を「サポーター」として迎え、子どもたちの憧れや鉄道話への欲求を満たしてくれる存在として活躍していただいています。 初年度は2か月に1回、2年目以降は概ね1か月に1回のペースで集まり、各年度末には家族や招待者に向けた成果発表会を開催しました。成果発表会では「自分以外の人にも分かるように伝える」ことを意識できるよう、スタッフが鉄道に詳しくない一般の人向けであると強調したり、軌道修正をしたりしながら進めました。それぞれ発表したい内容(鉄道の写真紹介、鉄道模型の動画、鉄道クイズなど)によってチーム分けをし、スライドや動画を準備していく中で自然発生的に子ども同士のやり取りが生まれ、チームのために自分が出来る図1 学生作・お買い物グッズ

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