発達障害のある子どもへの支援について-特別支援教育研究センターの取り組み-(小松 愛 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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ことを担当するという責任感や役割意識も芽生えていたように思います。その他の活動では、日頃の鉄オタとしての活動報告や、大回り乗車1のルートをチーム対抗でプレゼンし、最も魅力的だったチームのルートをメンバーで実際に巡る遠征に出掛けたり、鉄道技術研修センターへの遠足を実施したりしました。2021年度は技術科の先生の協力のもと、オリジナルの社章をテーマに3Dプリンターで満足度の高いグッズを作成しました(図2)。 このプログラムの効果を検討するために、年度毎にメンバーと保護者に対して仲間関係や自己効力感、向社会性に関するアンケート調査を行い、データを集めています。大西ら(5)と富井ら(6)の報告によると統計上は効果が確認できませんでしたが、メンバーを集めた振り返りの中で、「趣味が合う友達が学校にいないため、ここで仲間ができてすっきりした」という発言が聞かれました。参加メンバーは小学生から高校生と幅広い年齢層ですが、それぞれが複数のジャンルにまたがって精通している場合がほとんどで、1人が何かしら発信するとすぐに周りが反応し盛り上がることが多々あります。子ども同士で連絡を取り合って電車を撮影しに行くこともあり、仲間関係は十分に築けていると言えます。アンケート結果に変化が表れなかった理由として、日頃の生活状況が大きく影響してくる質問項目だったことが挙げられます。プログラムの中での関係性は深まりましたが、あくまで特別なもので、生活全体を通して考えるとまだまだ難しさを抱えているのかもしれません。 昨年度からは、活動の場がオンラインに移行されました。さすがに子どもたちはタブレットやパソコンの扱いに長けていて、問題なく参加出来ています。しかし、もともとの特性である場の空気、テンポの読めなさの問題が、オンライン上では強く表れているように思います。このあたりの要因も子どもたちの心にどのように影響を与えるのか、検証を続けていきたいと思います。 1 JRの場合は大都市近郊区間と呼ばれる決められたエリア内を、ルート上の重複なし・途中下車なしであれば最短経路の運賃で乗車できるという乗り方。活動内では、JR奈良駅~JR王寺駅間で奈良・京都・滋賀・大阪を回るルートが採用されました。 図2 鉄オタ倶楽部メンバー作品

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