「楽譜の裏側に隠されたもの」に迫ろう-民謡を取り入れたピアノ独奏曲を例に-(鈴木 啓資 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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第2曲を取り上げます。 3−1.《ハンガリー牧歌》第2曲1番⽬に現れる⺠謡 まずは、第2曲において最初に現れる⺠謡について考えてみます。曲の冒頭を⾒てみましょう(譜例1)。 譜例1 《ハンガリー牧歌》第2曲 第1〜17⼩節 (⼩節番号は筆者が追加) この楽譜を⾒たときに、どのように演奏しようと考えるでしょうか。⾳を鳴らしてみるとわかりますが、明るいような暗いような、なんとも⾔えない響きに気づくと思います。東洋的であるとも⾔えるでしょう。その⼀⽅で、⾳量はf、冒頭にはPresto, ma non tanto、つまり、「快速に、あまり速すぎず」と書いてあり、さらにはnon legatoの表記もありますから、勢いのある楽曲であることがわかるでしょう。そしてハンガリーの舞曲調の雰囲気もあります。 様々なことが楽譜に書かれており、どのように演奏したら良いのか悩んでしまいますね。もちろんこれらの情報だけでも演奏できますが、ここではさらに踏み込んで、⽤いられている⺠謡について考えてみたいと思います。この部分には以下の⺠謡が⽤いられています(譜例2)。 譜例2 Erdélyi magyarság: népdalok p.126より

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