平仮名ひらがなにもトレンドがあった!? −国語科書写⽤教科書における平仮名を⾒てみよう− 奈良教育⼤学 美術教育講座 北⼭ 聡佳 1.はじめに ―唯⼀の正しい平仮名なんてない― 平仮名には、実は唯⼀の正しい形は存在しません。⼩学校で先⽣から平仮名の正しい書き⽅を習ったと思いますが、実はそれは学校によって、教科書によって、あるいは先⽣によって少しずつ違うのです。平仮名の正しい形はたくさんあるとも⾔えます。 「や」をどのように書きますか(書いてみてください)。ある⼦どもに、私の書いた「や」が間違っていると指摘され、正しい形を書いて⾒せてくれたことがあります。私の「や」が図1の左、その⼦どもの「や」が右です。その⼦は、私の「や」は「や」ではないと主張しました。なぜなら、学校の先⽣が1画⽬と2画⽬は交わり、2画⽬の終わりは⽌めるのが正しいとその⼦に⾔ったからです。 これを読んでいる皆さんは、図1をどちらも「や」と読めるでしょう。それは、私たちが⽂字を読み書きして習得しながら⽂字の「概念」を覚えていくため、どんなフォント(⽂字のスタイル、デザイン)であってもその範囲内であれば読み書きができるようになるからです。しかし、平仮名を書くことを覚える段階では、そうはいきません。だから、とりあえず正しい形は⼀つであるかのように教えます。でも、正しい形が⼀つではないことを知ることも重要なのです。 図1 ⼿書きの「や」
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