平仮名にもトレンドがあった!?-国語科書写用教科書における平仮名を見てみよう-(北山 聡佳 著)- 奈良教育大学 出版会 ー
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2.平仮名はまだ進化している!? しかし、平仮名はどんな形でもよいわけではありません。平仮名の成り⽴ちについて別のE-book1で触れましたが、現在の平仮名は⻑い歴史の中で少しずつ変化してできました。歴史的にみると、先ほどの「や」はどちらも正しいと⾔えます。そして、現在でも唯⼀の字形2に統⼀されていないように、やはり平仮名字形はどんどん変化しています。⽇常の筆記⽤具の変化や横書きの主流化、活字の登場など、その要因はさまざまです。 誰もが⾒る正しい平仮名字形の基準が、例えば学校の教科書(「書写」の⼿書き⾒本など)にあります。そして、教科書によって、正しい字形はさまざまです(教科書は各教科いくつか種類があります)。誰でも⾃分の使う教科書しか⾒ないと思いますが、他の学校のものや、違う時代のものを⾒てみると、実にさまざまな平仮名字形が存在します。しかも、それらの字形は時代によって少しずつ変化しており、流⾏トレンドのようなものが⾒えてきます。ここでは、正しい平仮名字形がたくさんあることの是⾮などは考えず、平仮名を習得している皆さんに、その流⾏を紹介したいと思います。平仮名を書きながら読み進めてみてください。 3.今の教科書にも字形の違いがある 各教科の教科書は、⽂部科学省の検定に合格してから、各学校で使⽤されます。例えば現在(2022年度)は、⼩学校書写⽤教科書は5種類3あり、各学校がそれらから1種類を選んでいます。そして現在に続くこの教科書検定制度が始まったのが、戦後のことでした(それ以前にもありましたが、途中でなくなり、復活しました)。 さて、現在の⼩学校1年⽣書写⽤教科書から、⼿書きの平仮名を⾒てみましょう。表1に、その5種類の教科書から7つの平仮名をそれぞれ取り出してきました。皆さんもこれらを書いて⽐べてみてください。表1をよく⾒ると、字形に違う点がありませんか。例えば、「せ」の2画⽬は、まっすぐに書かれたり、やや曲げて書かれたりします。また最後ははねたり⽌めたりします。「た」「な」の3画⽬の最後もそうです。「た」の3画

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