ちは、ネコやイヌが喜んだり、悲しんだり、時には恥ずかしがったり嫉妬したりという豊かな⼼的⽣活を送っていることをまず疑わないでしょう。でもサカナや⾍となるとどうでしょうか。イヌ・ネコほどは感情を読み取りにくいかもしれませんね。 動物の「⼼」を理解する⼈間の⼼を扱う分野として素朴理論の研究をあげることができます。ウェルマンとゲルマン(Wellman & Gelman, 1992)によると、⼈間は素朴物理学、素朴⼼理学、素朴⽣物学という3つの核となる領域について、理論とよべるような知識体系をもっているといいます。素朴物理学とはモノの運動に関わる理解であり、素朴⼼理学は⼈間の⾏動理解のための知識体系です。そして、素朴⽣物学とは⼈間を含む⽣物の主に⾝体維持機能(⾷べることや、呼吸をすること、成⻑、排泄など)の理解に関わるものです。⼦どもたちは学校教育などで体系的に教わる以前に、⾃ら各領域の知識を学び体系的に蓄積していきます。素朴⽣物学研究の第⼀⼈者である稲垣・波多野(2005)は、5〜6歳という時期にはすでに、⼦どもたちは未熟ながら動物と植物を含む⽣物という統合された概念をもっていると述べています。 素朴⼼理学の中でも⼼的帰属(mental attribution)に関する研究領域では、⼈間が⼈間以外の事物に対してどのように「⼼(意図や欲求、感情)」を帰属させるのかについて調べています。この分野の古典的な研究としては、ハイダーとジンメル(Heider & Simmel, 1944)が有名です。彼らは、三⾓形や円の幾何学図形が動き回る映像を⾒た参加者が「ためらった」「気持ちを伝えようとした」というような⼼理的なストーリーを報告することを⽰しています。⼈は、画⾯上に⽰された幾何学図形であっても、それが⽬標に向かって進むような動きをしたり(⽬標指向性)、⾃⼒で動くとき(⾃⼰推進性)には、意図をもつものとして解釈する傾向があるようです(Premack & Premack, 1997)。また、近年ではロボット技術の発達とともに、⼦どもたちが⾃動的に動く機械(ロボット)にどのように意図や⽬標を帰属させるのかについても研究が⾏われるようになってきました。板倉(2007)は、ロボットが視線を⼈間に向けるなどのコミュニカティブな動きをした場合、2〜3歳の⼦どもたちは、ロボットの⾏
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